クラウドセキュリティポスチャー管理 (CSPM): 総合ガイド
公開日|2025 年 4 月 30 日
クラウドセキュリティポスチャ―管理 (CSPM) とは?
クラウドセキュリティポスチャー管理 (CSPM) は、組織のクラウド環境保護を補佐します。 設定ミスや非準拠設定といったリスクを継続的に特定して対処し、 クラウドシステムをベストプラクティスであるサイバーセキュリティ標準に準拠した状態に保ちます。 簡単に言えば、 CSPM は現代のクラウド環境におけるデータ侵害の主な原因となっている、クラウドの設定ミスを防ぐツールの総称です。 これらのツールは、クラウドインフラを監視し、設定をベストプラクティスやコンプライアンス基準に準拠させることを支援します。
CSPM のメリットは何ですか?
クラウドの導入が進むにつれ、クラウド環境は複雑さを増しています。 組織が複数のクラウドプロバイダーにわたってサービスを急速に拡大する中で、セキュリティチームは権限や、セキュリティなどの設定を管理しなくてはなりません。
CSPM ツールはこのプロセスを簡素化します。 継続的な可視性と自動化された推奨機能を利用して、セキュリティギャップを解消できます。
CSPM ソリューションには、いくつかの重要なメリットがあります。
- クラウドセキュリティポスチャー管理ツールは、クラウド環境をアクティブにスキャンします。 継続的なモニタリングを行うことで、設定ミスや外部に露出したデータ、コンプライアンスの問題を検出できます。
例: CSPM ツールは、古い TLS が設定され、忘れられた領域で稼働している、タグ付けされていないクラウド資産を検出することがあります。 続いて、本番環境のデータベースに対して完全なアクセスを付与する過度に寛容な IAM のロールが、最小権限とコンプライアンスのベースラインに違反していることが発見される可能性があります。 その後、CSPM はベストプラクティスとコンプライアンスポリシーに基づいて違反を修正できるように、対応するチームにアラートを送信します。 CSPM ツールの中には、これらの機能を自動化し、ユーザーに代わって実行するものもあります。
- これらのツールは問題を早期に特定し、 安全でないクラウド設定が引き起こすコストのかかる侵害を防ぐことで、クラウドのリスクを低減します。
例: CSPM では、API サーバーに対して匿名アクセス権を付与するような設定ミスのあるロールのあるKubernetes クラスタにフラグを立てることがあります。そのような状態を修正しないと、機密性の高いワークロードが外部から列挙されたりコントロールされたりする危険にさらされます。
- CSPM ツールは、CIS ベンチマーク、NIST サイバーセキュリティフレームワーク、ISO 27001 などのセキュリティフレームワークにクラウド設定を準拠させます。
CSPM によって、顧客管理キーによるサーバー側の暗号化が設定されていない Azure ストレージアカウントを検出することができます。 その後、CIS ベンチマークに対するコントロールのギャップにフラグを立て、修正手順を提案できます。
- CSPM ツールは、資産、設定、リスクを洗い出し、マルチクラウド環境全体の可視性を向上させます。
AWS、Azure、GCP にまたがって運用している場合、CSPM ツールによって、非推奨の領域 (モニタリング、ロギング、適切なアクセス制御が行われていないうえ、環境をリスクにさらしている資産など) で実行されている、タグ付けされていないコンピュートインスタンスを明らかにし、フラグを立てることができます。
CSPM がより広範なクラウドセキュリティ戦略とどのように連携するかについて詳しくは、「クラウドセキュリティプログラムを確立するためのベストプラクティスと教訓」をご覧ください。
CSPM の主な機能
CSPM はどのように機能するのでしょうか。 CSPM の主要な機能を以下に示します。
- 安全でない設定、過度に寛容なアクセス制御、露呈したデータを見つけ出し、担当チームにアラートを送信する、自動化された脅威検出機能。
- 組み込みのポリシーとレポート作成機能を使用して、クラウド環境が規制要件を満たしていることを確認するコンプライアンス監査。
- ステップバイステップの指示による修正ガイダンス、または脆弱性の自動修正。
- クラウドリソースのマッピング、未承認のサービスや脆弱なサービスの強調表示などを含む、インベントリと資産の可視化。
- セキュリティのベースラインを適用し、設定のドリフトを継続的に監視して、長期的にコンプライアンスを維持するためのポリシーの適用とドリフト検出。
- 開発プロセスの初期段階にセキュリティチェックを組み込めるよう、CI/CD ワークフローに統合するための、DevOps パイプラインとの統合
CSPM がより広範なセキュリティエコシステムにどのように適合するのか、ご興味がある場合は、 まず Tenable の「Understanding CSPM webinar (CSPM を理解する)」ウェビナーをご覧になることをお勧めします。
CSPM が重要である理由
CSPM はクラウドのセキュリティ問題を解決するだけにとどまりません。 すべてのクラウドサービスで適切なサイバーハイジーンを継続的に実践することで、クラウドでのスマートな組織運営をサポートします。 各担当チームは、環境が脅威にさらされる前に、設定ミスを早期発見できます。
また、公開されているリソースや誤って管理された認証情報といった最も重大な問題に関連する、優先順位が付けられたアラートを受け取ることで、平均応答時間 (MTTR) を短縮することもできます。
コストの可視化は、もう 1 つの重要な要素です。 CSPM によって、クラウドの支出を増加させる、孤立したリソースや過剰にプロビジョニングされたリソースを発見することができます。
CSPM は SOC 2、HIPAA、CIS などのフレームワークに基づいた評価を自動的に行うため、コンプライアンスの確保もより容易になります。 手動で設定を監査する代わりに、ポリシーの準拠状況をリアルタイムで把握できます。
お客様のような組織が、こういったメリットをどのように環境を超えて拡大しているかについては、Tenable のホワイトペーパー「Scaling cloud security (クラウドセキュリティの拡張)」をご覧ください。
一般的な CSPM のユースケース
セキュリティチームは、さまざまなワークフローに CSPM ツールを利用しています。 CSPM が対処すべき、最も急を要する課題の 1 つが設定ミスの特定です。
具体的には、CSPM ツールは、設定ミスによってバックエンドサービスへの認証なしアクセスを許可してしまう API ゲートウェイを検出することがあります。 適切な検査や制御が実施されていない場合、これによって機密データのエンドポイントがインターネットに公開されるおそれがあります。
しかし、CSPM は予防だけにとどまりません。 暗号化ポリシーの適用、機密データの保護、ユーザーアクティビティの監視を行い、通常とは異なるアクセスパターンを自動的に検出して対処するうえでも役立ちます。
API ゲートウェイに設定ミスがある場合、CSPM は認証されていないアクセス経路に自動的にフラグを立て、NIST や CIS などのコンプライアンス制御にそのエクスポージャーをマッピングし、具体的な修正手順を推奨することができます。
問題の修正方法を憶測しなくても、CSPM なら、認証の有効化、パブリックアクセスの制限、すべてのインバウンドリクエストに対する TLS 暗号化の適用など、いくつかの推奨事項を提示できます。
CI/CD やインフラのコード化のワークフローと連携させれば、CSPM は将来のデプロイメントにおける同じ設定ミスの再発を防ぐこともできます。
CSPM ツールの多くのメリットのうちの 1 つは、既存のワークフローに直接統合できることです。 これにより、可視性を犠牲にすることなく、複数の環境に簡単にセキュリティを拡張できます。
また、監査の時期には、CSPM は設定を業界標準に準拠するよう継続的に調整しているためレポート作成が簡単になります。 つまり、土壇場で準拠の確認に追われることはありません。
クラウドセキュリティポスチャー管理の課題
CSPM はクラウドセキュリティを強化しますが、動的な環境内で運用する場合は、対処可能な課題がいくつかあります。
マルチクラウドの複雑性
AWS、Azure、Google Cloud などの各クラウドプロバイダーは、独自のアーキテクチャ、用語、アクセス制御、責任共有モデルを使用しています。 CSPM がなければ、統一されたセキュリティポリシーのもとにそれらを整合させるのは、労力を要する面倒な作業です。 CSPM を使用した場合でも、担当チームがプラットフォームにまたがる自動化を最大限に活用するためには、明確に定義されたプロセスとロールベースのアクセスが必要です。
スキルのギャップ
すべての組織にクラウドセキュリティ専門のチームがあるわけではなく、CSPM ツールの効果は使用する人材のスキルに依存します。 そのため、ワークフローと統合できる直感的なツールを選ぶことが成功の鍵です。
開発速度に対する懸念
CSPM を導入することで、イノベーションのスピードが落ちるのではないかと懸念を抱くチームもあるかもしれませんが、 実際は、最新の CSPM ツールは DevOps パイプラインや CI/CD ワークフローと統合されることで、俊敏性を損なうことなく安全な開発を後押しします。
クラウドセキュリティフレームワークの強化をお考えの場合は、 ホワイトペーパー「クラウドセキュリティ態勢を堅牢化するための 7 つのステップ」をダウンロードしてください。
適切な CSPM ソリューションの選定
以下の表は、CSPM と他の一般的なクラウドセキュリティツールやフレームワークを比較したもので、広範なクラウドセキュリティの状況を把握するのに役立ちます。
CSPM | CWPP | CNAPP | CIEM | DSPM | |
主な目的
| クラウドコントロールプレーンにおける設定ミスやポリシー違反の可視化と修正
| ランタイムに発生する脅威からクラウドのワークロード (仮想マシン、コンテナ、サーバーレスなど) を保護
| CSPM、CWP、CIEM、DSPM の機能を組み合わせた統合プラットフォーム
| 最小権限アクセスと権限のガバナンスと適用
| クラウド内の機密データの検索、タグ付け、保護
|
主なユースケース
| コンプライアンモニタリング、ポリシー適用、ドリフト検出、設定ミスの修正
| マルウェア検出、システム堅牢化、挙動分析
| 可視性の統合、ポスチャー管理、脅威の検出と対応
| アクセスポリシーの規模適正化、IAM スプロールの管理、ゼロトラストの適用
| 機密データの特定、アクセスの制御、エクスポージャーや漏洩の防止
|
データの対象範囲 | クラウドコントロールプレーンのリソース (ストレージ、ネットワーク、IAM 設定など) | OS レベルのデータ、アプリケーションの挙動、ランタイムのメモリ/プロセス | ワークロード、アイデンティティ、データ、設定に関するインサイトの組み合わせ | アイデンティティのメタデータ、アクセスログ、許可、権限 | ストレージサービスと SaaS アプリケーション全体の構造化データと非構造化データ |
それぞれが特定の目的を果たしていますが、これらが互いにどのように補完し合っているかを理解することで、より多層的なクラウド防御戦略を構築できます。
ニーズに合った CSPM の選定についてご不明な点がある場合には、 「クラウドインフラストラクチャのリスクを軽減する最新の CSPM ツールの選び方」をご一読ください。
Tenable クラウドセキュリティポスチャー管理のソリューション
ポスチャー管理機能に関する詳細は、Tenable の CSPM リソースをご覧ください。
Tenable は、安全なクラウド態勢を維持するための CSPM ソリューションも提供しています。 たとえば、金融サービス企業は Tenable のツールを使用して、設定ミスのあるストレージアカウントや安全でないアイデンティティ権限を特定できます。 これは、データ漏洩の可能性を防ぎ、全体的なクラウドセキュリティ態勢を改善するのに役立ちます。
Tenable がお客様のクラウドセキュリティの取り組みをどのようにサポートできるかについて詳しくは、 Tenable の CSPM ソリューションをご覧ください。
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